配偶者居住権と土地収用法との関係

 配偶者居住権の新設等に係る規定が令和2年4月1日に施行されるにあたり、土地収用法第88条の2の細目等を定める政令の一部が改正されるなど、所要の整備が行われました。土地等の収用に係る移転に伴い、配偶者居住権が消滅するものと認められるときは、当該建物の価格のうち、配偶者居住権部分の金額が配偶者に対して補償されることとなります。

(1)補償額の算定方法

①配偶者居住権を有する者に補償される場合の建物所有者に支払われる移転料の額は、通常妥当と認められる移転費用から、配偶者居住権を有する者に対する補償額を控除した額とされます。

②配偶者居住権の目的となっている建物の移転に伴い、配偶者居住権が消滅するものと認められるときは、当該権利がない場合における当該建物の価格から配偶者居住権控除後の建物の価格を控除した額を配偶者に対して補償されます。

(2)税制との関連性

 令和2年度税制改正において「収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例等について、居住建物等が収用等をされた場合において、配偶者居住権又は配偶者敷地利用権が消滅等し、一定の補償金を取得するときは、その適用ができることとする。」とあるとおり、配偶者が取得する補償金については所得税上の特例の適用を受けることが可能です。

  ただし、配偶者居住権の途中消滅時において、適正な対価を支払わない建物所有者に対して贈与税が課税がされるかどうかは明らかになっていないものの、「原則として贈与税課税」からは対象外とされることが妥当であると予想されます。