令和元年12月11日、法務局における遺言書の保管等に関する政令が公布されました。自筆証書遺言を作成し、その遺言書を法務局で保管した場合、遺言者に住所変更が生じた際だけでなく、受遺者・遺言執行者に住所変更が生じた際にも届け出が必要であることに注意が必要です。
(1)政令の概要
(2)遺言者の住所等に変更があったときの届出
遺言書保管所(法務局)に遺言書を保管している遺言者は、次に掲げる事項に変更が生じたときは、速やかに、法務省令で定める書類を添付してその旨を遺言書保管官に自ら出頭して届け出なければなりません。
①遺言者の氏名、生年月日、住所及び本籍(外国人にあっては国籍)
②次に掲げる者の記載があるときは、その氏名又は名称及び住所
イ 受遺者
ロ 遺言執行者
(3)受遺者の住所変更の重要性
遺言者の死亡後、相続人等は遺言書情報を閲覧したり、遺言書情報証明書の交付を受けたりします。その際、遺言書保管官から他の相続人や受遺者、遺言執行者にその事実が通知されますが、相続人や受遺者の住所変更が行われていない場合、通知が正確かつ速やかに行われるかについての問題が生じてしまいます。
住所変更の手続きも本人自らの出頭が必要であることから、例えば、遺言者がご高齢で住所変更時には手続きが困難である可能性があります。その他、その届出の必要性自体をご存知ない場合や、失念してしまうことも自筆証書遺言であれば考えられます。
(4)マイナンバーが活用されれば問題点は解消されるが、、、
今後、マイナンバー制度との組み合わせでこの問題点が解消される可能性はありますが、現時点ではマイナンバーの利用までは想定されていません。そもそも、自筆証書遺言である以上、相続人や受遺者には内容を秘密にしたまま作成し、保管することも多いと思いますが、遺言書保管時に相続人や受遺者のマイナンバーまで必要となってしまっては利用しづらい面も生じてしまいます。
この点、公正証書遺言であれば専門家より内容についてのアドバイスが得られ、変更が生じればその都度相談することができ、さらに遺言執行まで依頼していれば、実際の遺言内容を執行する際にも問題が発生する可能性は少なくなるものと思われます。