「名義変更プラン」に対する改正所得税基本通達が公表されました。

近年、法人で保険契約を締結し、解約返戻金の低いタイミングで売買や退職給与等によって個人に保険の権利移転をしてしまうスキームがありました。個人は保険契約を時価(解約返戻金相当額)で取得するため、少ない出費で大きな保険金額を受け取れることとなります。さらに、解約返戻金が低いタイミングであることにより、法人においては売却損等が計上されることとなります。

この点においては、以前から一連の行為の正当性や、保険契約の時価として解約返戻金が妥当であるかについて問題視されていました。

そこで、国税庁は「低解約返戻金型保険」や「復旧することのできる払済保険」など解約返戻金が著しく低くなる保険契約等については、第三者との通常の取引において低い解約返戻金の額で名義変更等を行うことは一般的に想定されないことから、名義変更時において解約返戻金の額で評価することは適当でないとし、意見募集(パブリックコメント)を行い、令和3年6月25日、改正所得税基本通達36-37を公表しました。

この改正により、一定の保険契約の場合、権利の移転時において、法人は売却損等を計上できないこととなりました。

なお、この改正通達は、使用者が役員や従業員に保険契約等に関する権利を支給した場合に対象とする旨規定されていますが、法人間での保険契約の名義変更においても同様の取扱いとなります。

 

(保険契約等に関する権利の評価)

36-37 使用者が役員又は使用人に対して生命保険契約若しくは損害保険契約又はこれらに類する共済契約(以下「保険契約等」という。)に関する権利を支給した場合には、その支給時において当該保険契約等を解除したとした場合に支払われることとなる解約返戻金の額(解約返戻金のほかに支払われることとなる前納保険料の金額、剰余金の分配額等がある場合には、これらの金額との合計額。以下「支給時解約返戻金の額」という。)により評価する。

ただし、次の保険契約等に関する権利を支給した場合には、それぞれ次のとおり評価する。

(1) 支給時解約返戻金の額が支給時資産計上額の70%に相当する金額未満である保険契約等に関する権利(法人税基本通達9-3-5の2の取扱いの適用を受けるものに限る。)を支給した場合には、当該支給時資産計上額により評価する。

(2) 復旧することのできる払済保険その他これに類する保険契約等に関する権利(元の契約が法人税基本通達9-3-5の2の取扱いの適用を受けるものに限る。)を支給した場合には、支給時資産計上額に法人税基本通達9-3-7の2の取扱いにより使用者が損金に算入した金額を加算した金額により評価する。

(注) 「支給時資産計上額」とは、使用者が支払った保険料の額のうち当該保険契約等に関する権利の支給時の直前において前払部分の保険料として法人税基本通達の取扱いにより資産に計上すべき金額をいい、預け金等で処理した前納保険料の金額、未収の剰余金の分配額等がある場合には、これらの金額を加算した金額をいう。

 

附則

(経過的取扱い)

この法令解釈通達による改正後の所得税基本通達は、令和3年7月1日以後に行う保険契約等に関する権利の支給について適用し、同日前に行った保険契約等に関する権利の支給については、なお従前の例による。

 

令和3年7月2日