上場株式の贈与のタイミング

 新型コロナウイルス感染症の影響により、上場株式の中には2020年3月~4月頃に株価を大きく落とした銘柄が多くありましたが、相続税対策としては生前贈与のタイミングと言えます。

(1)上場株式の評価方法

 上場株式は、その株式が上場されている金融商品取引所が公表する課税時期(贈与の場合は贈与により財産を取得した日)の最終価格によって評価を行います。ただし、課税時期の最終価格が、次の3つの価額のうち最も低い価額を超える場合は、その最も低い価額となります。

①課税時期の月の毎日の最終価格の平均額

②課税時期の月の前月の毎日の最終価格の平均額

③課税時期の月の前々月の毎日の最終価格の平均額

 なお、課税時期に最終価格がない場合やその株式に権利落などがある場合には、一定の修正を行います。また、東京証券取引所における価額だけでなく、他の取引所での価額も採用が可能です。

(2)贈与のタイミング

 上記(1)の評価方法によると、6月中の贈与であれば、その贈与日の評価額だけでなく、4月の最終価格の月中平均額も評価額として採用することが可能です。つまり、株価が徐々に回復している銘柄の場合でも、4月中はまだ下落していたものについては、6月中の贈与実行が良いタイミングである可能性があります。

(3)贈与時の注意点

 特定口座間で上場株式の贈与については、子や孫の特定口座で株式の受け入れができない場合があります。例えば、親が特定口座で保有する銘柄の一部について贈与する場合で、子が既に特定口座で同じ銘柄を保有しているときは、子の特定口座で株式を受け入れることができません。(一般口座での受け入れは可能です。)

 また、特定口座では株式の移管手続きに数日を要することがあります。その場合、贈与契約日と移管日にズレが生じることとなりますが、原則的には契約日を贈与日として良いものと考えられます。ただし、贈与契約日については恣意性が介入する部分でもありますので、特に贈与契約日と移管日が大きく異なる場合などは原則どおりとすることが難しい場合もあるものと思われます。(証券会社によっては、安全性を鑑みて移管日をもって贈与日として案内されている場合もあります。)

【相続税法基本通達1の3・1の4共-8(財産取得の時期の原則)】

贈与の場合:書面によるものについてはその契約の効力の発生した時、書面によらないものについてはその履行の時