貸付用不動産の評価に関する通達改正について

国税庁は、令和8年度税制改正大綱にて示された方針に基づき、貸付用不動産の評価方法の見直しに関する通達改正案を公表し、意見公募(パブリックコメント)を実施しました。意見公募は令和8年10月18日まで実施され、寄せられた意見を踏まえて正式な通達が定められる予定です。

 

1.見直しの背景

賃貸アパート・マンションなどの貸付用不動産は、実際の市場価格と相続税評価額との間に大きな乖離が生じる場合があり、その評価差額を利用した相続税対策が広く行われてきました。国税庁は、こうした市場価格と相続税評価額の乖離や、財産評価基本通達6項の適用を巡る訴訟の増加などを踏まえ、評価の適正化と納税者の予測可能性の向上を目的として、貸付用不動産の評価方法を見直す方針です。

 

2.通達改正案

①評価方法

課税時期(相続・贈与等)の前5年以内に対価を伴う取引により取得又は新築(取得等)された貸付用不動産の価額は、原則として「課税時期における通常の取引価額に相当する金額」により評価します。ただし、取得価額が通常の取引価額に相当すると認められる場合には、以下の方法による評価が認められます。

土地等…取得価額 × 地価変動率 × 80%

家屋及びその付属設備又は構築物…(取得価額 − 取得後の減価償却費等)× 80%

 

なお、法人の株価評価上、純資産価額を計算する場合における当該土地等又は家屋等については、この定めの適用はありません。

 

②主な除外例

  • 収用等に伴い取得した一定の土地等又は家屋等
  • 所得税法の固定資産の交換特例の適用を受けた一定の土地等又は家屋等
  • 特定の事業用資産の買換え特例の適用を受けた一定の土地等又は家屋等
  • 一定の増改築がされた場合の当該増改築等部分
  • 通達制定日までに、次に掲げる土地等に新築された家屋等(同日において「建築中」のものを含む)

イ 同日前5年以内に取得された土地等以外のもの

ロ 同日前5年以内に相続等により取得された土地等

 

3.今後の留意点

今後は貸付用不動産の新築又は取得をしても、相続税対策の即効性は失うこととなってしまいます。そのため、より中長期的な視点で対策を検討する必要が生じます。

また、今回の通達改正案の公表では「建築中」の定義が公表されました。「建築中とは、令和8年●月●日〔通達制定日〕までに、家屋等の請負契約その 他新築に係る契約が締結され、同日において、当該家屋等の新築に係る工事が行われ ており、かつ、その費用の全部又は一部が支払われていることをいう。」とされています。建築中にあてはまるためには契約の締結だけでなく、工事の着工が必要になるため、契約後未着工の案件は通達制定日までに着工できることが望まれます。

さらに、今後の相続又は贈与における貸付用不動産の評価の面では、取得日だけでなく着工日に注意する必要性が生じます。築浅の物件を評価する際に「通達制定日までに建築中」の確認を怠らない様、特に令和9年~令和10年上半期取得の貸付用不動産の着工日には特に注意が必要です。

 

令和8年10月25日