令和2年分の路線価の適用について

 相続税や贈与税において、土地等の価額は「時価」により評価することとされています。しかし、納税者が自身で「時価」を把握することは必ずしも容易ではありません。そこで、相続税等の申告の便宜及び課税の公平を図る観点から、国税局より、毎年全国の民有地について土地等の評価額の基準となる路線価及び評価倍率が公表されています。

 令和2年分の路線価等も7月1日に国税庁HPより公表されましたが、昨年分より価額が高騰している地域が多かったようです。

(1)鑑定評価に関する気になる文言

 国税庁HPでは、路線価等の公表にあたり、「令和2年分の路線価等について」の中で以下の文言が掲載されていました。これは、昨年分以前の路線価等の公表時には無かった文言です。

(注) 納税者の方が不動産鑑定士による鑑定評価額などに基づき、相続等により土地等を取得した時の時価により評価することもできます。

 これまでも、土地等については路線価によらず、鑑定評価額を用いて相続税等の申告されるケースも多々ありましたが、その場合には路線価を採用せずに鑑定評価額を用いることの合理的な理由が求められることがありました。課税の公平を図る見地から、「財産評価基本通達」=路線価評価によることが原則的に考えられ、裁判例では否認される事例も少なくなかった鑑定評価額ですが、令和2年分においては広く認められてくるのでしょうか。

 背景としては、路線価は令和2年1月1日を評価時点とした価額であるため、今般の新型コロナウイルス感染症の影響により地価の下落があった場合は未考慮であると言えます。そのため、上記の様な文言が付されていることが考えられます。

(2)補正率の検討

 今回公表された令和2年分路線価によらず、多数の納税者が鑑定評価によることとなる様な地域が生ずる場合に備えて、次の文言も注意書きとして付されておりました。

(注)今後、国土交通省が発表する都道府県地価調査(7月1日時点の地価を例年9月頃に公開)の状況などにより、広範な地域で大幅な地価下落が確認された場合などには、納税者の皆様の申告の便宜を図る方法を幅広く検討いたします。

 上記については、全ての路線に一つずつ補正率が設定されるのではなく、地価の大幅な下落(概ね20%以上?)がみられた地域に対し、市区町村等ごとの一定のエリア単位で補正率が設定されることになる様です。

 ただし、補正率が設定されるにしても、都道府県地価調査の公表後となると、本年10月以降になるものと予想されます。1月頃に相続発生の場合、申告期限に間に合わない可能性もあり、申告期限の延長等も検討される様ですが、令和2年中に相続開始の相続税申告については、早めに申告書が完成しても直ちに提出はしない方が良いかもしれません。