戸籍法の一部が改正され、利便性が高まります。

 令和元年5月24日、戸籍情報とマイナンバーを連携する「戸籍法の一部改正法」が参院本会議で可決・成立しました。現行法では、相続が開始すると、被相続人の出生から死亡までの戸籍等を収集する必要がありますが、転籍を繰り返している場合や本籍地が遠方の場合には事務的に面倒な部分がありました。この改正により相続人の事務負担は軽減することが予想されます。

(1)本籍地以外の市区町村での戸籍謄抄本の発行

 自身の戸籍のほか、配偶者、父母、祖父母、子の戸籍の取得について、本籍地が遠隔にある方でも、最寄りの市区町村の役場の窓口において、戸籍謄抄本を取得することが可能になります。ただし、新たな制度の運用は、5年後を目途に予定されている様です。

(出典:法務省ウェブサイトより)

(2)相続の際の仮払い制度にも影響か!?

 相続が発生し、金融機関がその事実を知ると、預金口座は凍結され、葬儀費用や相続人の生活費等の緊急な支出への対応が難しくなる可能性があります。そこで、「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」により、預金の仮払い制度が創設され、相続人は遺産に属する預貯金債権のうち、各口座ごとに以下の計算式で算出された金額(同一の金融機関につき150万円を限度)までについては、他の相続人の同意がなくても単独で払戻しが可能になります。(令和元年7月1日施行予定)

【計算式】

相続開始時の預貯金債権の額 × 1/3 × 当該払戻しを求める相続人の法定相続分

(出典:法務省ウェブサイトより)

 ただし、上記の制度では、自身の法定相続分を金融機関に証明する必要があり、そのためには戸籍の収集が必要になります。戸籍の収集が大変な状況下では、やはり葬儀費用のための払戻しが困難になる可能性がありますが、上記2つの制度が実際に運用され、戸籍の収集が素早く行える様に改正がなされれば、急な支払いにも対応が可能になるものと考えられます。