相続税の申告・納付期限の延長と留意点

 新型コロナウイルス感染症の影響により、相続人等が期限までに相続税の申告・納付ができないやむを得ない理由がある場合には、税務署に対して個別申請を行うことにより、期限の延長が認められます。

 なお、個別申請を行った場合、申告及び納付期限は原則として申告書の提出日となります。そのため、相続税の申告及び納付は可能となった時点で提出を行えば良いこととなります。

(1)やむを得ない理由の例示

 上記のやむを得ない理由とは、新型コロナウイルス感染症に感染した場合はもとより、次の様な状況でも該当します

①体調不良により外出を控えている場合

②平日の在宅勤務を要請している自治体に居住している場合

③感染拡大により外出を控えている場合

(2)個別申請の方法

 申告期限の延長に関する個別申請は、別途申請書等を提出する必要はなく、申告書の提出の際、その余白部分に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」といった文言を付記するか、e-Taxの場合は「相続税の申告書等送信票(兼送付書)」の「特記事項」欄にその旨を入力するなど簡易な手続きで申請が可能です。

(3)遺産分割への影響

 相続税の申告・納付手続きに関しては期限延長の個別申請により救済がされますが、遺産分割協議に関しては、しばらくの延期が良いとは限らない場合があります。例えば、相続財産の中に賃貸不動産が含まれる場合、未分割期間中の賃料収入は各相続人に法定相続分で帰属し、後々に遺産分割が確定したとしてもその効力が遡ることはありません。そのため、賃貸不動産を相続する人が各相続人の中で共通認識として内定している場合は、やはり早めに遺産分割は確定しておいた方が良いこととなります。

 かといって外出や多人数での会議がままならない状況を変えることはできません。そのため、昨今では多人数でのビデオ通話やWEB会議機能を持つツールがあることから、それらを利用することが良いかもしれません。