令和元年分の路線価が公表されました。

 令和元年7月1日、新たな路線価が公表されました。2025年開催の万博や統合型リゾート施設誘致への期待感が高まり、大阪メトロ御堂筋線を中心に都心から周辺へと上昇が波及する動きがあった様で、大阪府内の平均変動率は前年比プラス1.9%となり、6年連続で上昇した模様です。

(1)路線価はどの様に決定されるのか

 路線価は、宅地の価額がおおむね同一と認められる一連の宅地が面している路線(不特定多数の者の通行の用に供されている道路をいいます。)ごとに設定され、売買実例価額、公示価格、不動産鑑定士等による鑑定評価額、精通者意見価格等を基として国税局長がその路線ごとに評定した1㎡当たりの価額とされています。(財産評価基本通達14)  

 また、路線価は、おおむね次のような過程を経て決定すると言われています。

①その年の1月1日時点における代表的な地点(標準地)の価額を売買実例価額、公示価格、不動産鑑定士等による鑑定評価額、精通者意見価格等を基として決定します。

②標準地の価額を基にして較差条件を加味し、標準地周辺の路線価を決定していきます。

③②を進めていくと、ある標準地からの路線価と別の標準地からの路線価が接合する部分が生じますが、その差がある場合に調整を行います。

④③を進めていくと、各税務署間で接合する部分が生じますが、その差がある場合に調整を行います。

(2)路線価方式によらない場合

 相続税や贈与税の申告時の土地評価実務においては、路線価方式によらず、不動産鑑定士の鑑定評価額をもって申告されることが、実際には存在します。路線価の決定方法が上記(1)の流れである以上、土地の個別事情が路線価に反映されていないことがあるためです。

 しかし、その鑑定評価の採用には慎重な判断が必要です。過去の裁決事例では、「特別の事業がない限り、評価通達における評価方法をその財産の時価と解する」とされたものがあり、さらにはその鑑定評価の内容まで問われることになっています。

 路線価方式による評価は租税の公平性の確保、納税者の便宜、徴税費用の節減等の観点から、ある程度は相当であると考えられており、これと異なる評価方法を採用するためには、まず路線価方式がその土地の個別事情を著しく加味していないことを証明する必要があります。確かに、路線価が局地的な事情を反映していないのではと疑わしく感じることは多々ありますが、その証明は難しい場合があります。

 そのため、土地の評価においては、特に有利不利のみをもって鑑定評価を採用しないようにしなければなりません。鑑定評価には鑑定費用も当然に発生するため、まずは税の専門家である税理士に相談が必要と考えます。

【参考】

相続税法第22条⦅評価の原則⦆

この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。

財産評価基本通達1(2)⦅評価の原則⦆

財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による。

財産評価基本通達6⦅この通達の定めにより難い場合の評価⦆

この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。